仙台で飲む食べる その2

2015/12/26
朝6時。さわやかな目覚めである。
外が明るい。
予報どおり雨は上がっているようだ。
きょうは塩竈まで足を伸ばす予定。しかしまずは犬散歩である。
宿を出て、霊屋橋を渡り広瀬川へ向かう。
流れに沿って細い遊歩道があり、途中から河原へ下りることもできる。
人がいないのを見計らって河原でワンコらを放す。まあ走るわ走るわ。
しょうがないよな。きのう1日じゅう車の中だったんだから。
ふと見上げると霊屋方面にはでっかい虹がかかっている。
こりゃあ天気もよさそうだ。

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遊歩道をゆくワンコら。胴輪のせいか、おかみが引きずられている。

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おお、虹じゃ。なんかわからんけど縁起がよさそうだ。

7時すぎには宿を出発。
気まぐれナビ子に振りまわされながらも、8時には「塩竈水産物仲卸市場」へ到着する。
朝食はここでとるつもりだ。

市場のスペースはかなり広く、一般にも開放されているせいか観光客が多い。
まずは見学してみよう。
場内は「鮮魚」「塩乾」「加工品」などにブロック分けされているようだ。
あたり前だが、値段は安めの小売店なみ。だけど品数は豊富だ。
「まぐろ(ひがしもの)」や「鯨」専門店など、柏崎市場では見慣れない店も多い。
さすが東北と感心したのが「ナメタガレイ」の値段。キロ5,000円程度はするようだ。
暮れが近づくと、倍以上に高くなるとか。
そんじゃあそろそろ朝食を物色しようかな。

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三尺にならぶ鯨のあれこれ。旨そうだけど高いぞ。

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こちらは干物。キンキ(キチジ)は1枚1,800円。

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マグロをさばくおやじさん。傍らの包丁がでかい。

各店舗には朝食につまめそうな小分けのパックが売っている。
まぐろぶつ300円とか明太子150円とか。刺身セット500円なんてのも。
ひとまわりして購入したのはまぐろぶつ300円と釜揚げシラス200円。
ついでにハネものの笹かまぼこ200円(どえらい量がある)。
ごはんと味噌汁は飯喰いスペースで手に入れた。これでじゅうぶんだろう。

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こいつが朝食セット。マグロがけっこう多かった。

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おかみとサトちゃんが食事の準備。いそいそと嬉しそうだ。

食後は市場をもうひと回りして、お買いもの。
意外と旨かった激安笹かまぼこと竹輪をひと袋ずつ。松前漬け用の刻み昆布とするめのセットをそれぞれ1キロ。
はじめて見た「油揚げの糠漬け」などを購入する。
あとは昼まで予定がない。海にでも行ってみるかな。
ナビ子にたよらず勘まかせで走っていたら、ちゃ〜んと海に出た。おひさしぶりの太平洋である。

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塩竈マリーナ。空の青さがうらやましい。

さて昼だ。塩竈に、いや仙台にきた大きな理由は「塩竈かき小屋」の存在にある。
おかみ・ヒデさん・サトちゃんともに大の牡蠣好きなのだ。
とくにおかみ。
2014年の2月、「松島牡蠣祭り」で焼きガキを半生で喰いまくり、結果的に腹をこわした(あたったらしい)。
にもかかわらず牡蠣への執着心は衰えることがない。
新潟を出るときから「カキカキ、カキカキ」と呪文のごとく唱え続けていた。

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「塩竈かき小屋 本店」前で、期待に燃えるおかみ。

「塩竈かき小屋」は蒸し牡蠣が喰い放題で時間は1時間。牡蠣のほかに牡蠣ごはんと汁がついてひとり3,000円だ。
テーブルにはステンレス製の巨大な蒸し台が組み込まれ、座るとすぐにドサーッとばかりに牡蠣投入。その上からふたが載せられる。
「20分ほど待ってね」とおばちゃんがくぎを刺す。喰いごろは店が決めるのだ。
その待ち時間もとうぜん1時間のなかに算入される。
ってことは、1回おかわりすると待ち時間だけで20分×2で40分となるわけだ。
残り時間は20分しかないことになる。
しかし目の前にある牡蠣を4人で喰い尽くすには、30分程度はかかるだろう。
つまり、おかわりはほぼ不可能ってこと。
なるほど。よく考えられたシステムである。

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おばちゃんが牡蠣を投入。えらい量である。

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ふたが開いたぞ。戦闘開始でちょっとポーズ。

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戦いすんだ蒸し器に残るあけみ貝の残骸。

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おいらとおかみで食べた牡蠣殻。じゅうぶんだろう。

ちなみにおいらはさほど牡蠣への執着はない。ぷりっとしたやつを4つか5つも喰えば満足だ。
しかしおかみは違う。旨い牡蠣を山ほど喰いたいらしい。したがってこの店では彼女の「牡蠣摂取欲」は満たされなかったようだ。「今夜の飲み屋ではゼッタイ生牡蠣を食べる」と息巻いている。

さて。せっかくここまで来たんだからと、パーキングに車を置いて塩竈の街を観光する。
しっかり整備されたメインストリートをはさんで和菓子屋、味噌・醤油屋、酒蔵など昔ながらの建てものが点在する。
そのなかの1軒、太田與八郎商店(白醤油が有名)に原寸大の犬頭が置かれている。
どう見てもバニである。
店のおねえさんに伺ったところ、地元の彫刻家の作品らしい。
うちにもひとつほしいなと思ったが値段を聞いて即座にあきらめた。
ひょっとしたらと思い酒屋にも寄ってみた。やはり「墨廼江」は売っていないようだ。

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メインストリート沿いの太田與八郎商店。いかにも古い商家風。

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これが原寸大のバニ頭。舌の上にはなぜか大豆が…

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さる顔がかわいい御竈神社の狛犬さん。前肢は新しく造り足しているようだ。

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銘酒「浦霞」の蔵元。塩竈にあったんだね。

2時間ほどで散策を終わらせ、一路仙台へ。
捨てばちな案内を繰り出すナビ子に悩まされつつ、泣きながら宿へとたどり着く。
さっそくシャワーを浴びてパンツの儀式。
犬ごはんをすませたらいよいよ夜の街へ出陣である。

今夜の1軒目は本町の「おかん 分店」。
雑居ビルの地下1F、店内は卓席中心でそれなりに広い。
きのうの「白雪」とくらべると、ぐっとくだけた雰囲気だ。
まずはビール。そしてもつ煮込みとガーリックトーストを注文する。
おいら以外は生牡蠣も。おかみは2、3枚食べてたようだ。
宮城名物、「定義山の三角油揚げ」もオーダー。
こんがり焼けた油揚げのコゲ風味がたまらない。でも新潟が誇る「栃尾油揚げ」とどちらを選ぶかといわれると、う〜む…。
この店も日本酒が揃っている。しかし「墨廼江 特別純米」の姿はない。
こりゃあ飲めずに終わりそうだな。
しかしもうひとつの目的「仙台せり鍋」はありましたね。さっそく注文。
登場した土鍋には大量のせりの根元(根っこ付き)とささがきごぼう、ねぎや豆腐など。
「ぐつぐつしてきたら、こちらも入れてください」
おねえさんが指さす皿には山盛りのせりの茎と葉が。
どうやらほんとうに「せり」を食べるための鍋のようだ。
いわれたとおりに茎と葉を追加して、火がとおったところで食べてみる。
旨い。とくに根っこが。しゃきしゃきとした歯応えに甘みまで感じる。これはいい。
だしは鶏ガラベースにかつおと昆布だろうか。味つけはかえしとみりん。
これならば再現できるだろう。
残った汁にはうどんを入れてくれた。ちょっぴり細めの「うーめん」風のうどん。ひと筋も残さず4人で平らげて店を出た。

今夜も2軒目はカフェに。
しかし予定していた「Con-combre(コンコンブル)」に行ったところ、結婚式の二次会で貸し切りだとか。しかたなく近くの花屋のおねえさんに教えられた某店へ。
この店でのことは触れずにおきたい。
店内のあらゆるところを侵蝕した大量の黄色いアヒルに、おいらとヒデちゃんは針のむしろ状態だった。

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黄色いアヒルはテーブルをも占拠していた。

ほうほうの体で某店を逃げ出し、向かった先は中央1丁目の「バール ダイコク」。
仙台駅に向かう名掛丁のアーケードにあり、同名の居酒屋と隣接する。
その居酒屋の入り口にさり気なくおかれたひと瓶の日本酒。
「墨廼江 特別純米」である。これは期待できるぞ。
もうビールはいらない。いきなり日本酒に突入した。
酒メニューに「墨廼江」はないけど知ったことか。
「宮城のお酒、とくに墨廼江を楽しみに新潟からきたんですが、この2日間どこへいってもないんですよ」
テーブルの下で両手は自然ともみ手になる。
店員さんはかしこまって聞いてくれているようだ。
「それが、隣の店の入り口においてあるんですよ。ひょっとしてここにも…」
さいごは哀願調になっていたかもしれない。
「少々お待ちください。確認してまいります」
そして2、3分後にもどってきた彼の手には、「墨廼江 特別純米」の一升瓶が。
隣りから持ってきたんだろうか。
「常温、もしくは燗でよろしければ、お出しできます」
内心のうひうひ感を隠しつつ、「常温でおねがいします」
金華〆サバとばくらいも注文して酒を待つ。そして。
「こちら、墨廼江 特別純米です」
小ぶりのワイングラスに満たされた一杯に口をつける。
ふた口め、隣りのサトちゃんにもひと口。
ため息と同時に声が出た。
「おいしいねえ」
常温のせいだろうか。爽やかさより先に味わいが口中に広がる。
香りも酸味も飲み口も尖ったところがない。平静な味わいとでもいうべきか。
かといって「水のごとく」に薄っぺらなわけではけっしてない。
常温でもう一杯、続いてぬる燗をいただいたところで買い占めを決意した。

*結果だけいえば、翌日さんざん探したけれど、仙台駅周辺に「墨廼江」を売っている酒屋はなかった。けっきょく新潟に帰ってからネットで購入した。

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「バール ダイコク」のカウンター。ようやく「墨廼江」にめぐり逢えた。

ダイコクを出て名掛丁アーケードをぶらぶらと愛宕上杉通りまで歩く。
土曜の夜だけにおそくまで人通りが絶えることはない。
しかし国分町の風俗おっちゃんに聞いたところでは、昔にくらべれば賑わいは半減したんだとか。
どこも同じなんだな。
明日は新潟に帰る。待っているのは「準」限界集落での生活だ。
さらば街の灯、である。

翌朝も天気は悪くない。
仙台駅近くの喫茶店で朝食後、東北道に乗り一路白石へ。
「うーめん」を食べるためである(まだ喰うのかよ…)。
さすがに高速道路ではおとなしいが、インターを下りるとまたナビ子の反乱がはじまる。
なんとか農産物直売所にたどりつき、ついでに地元スーパーで宮城産せりを買い込む。
暴れるナビ子をなだめつつ、白石駅前「うーめん処なかじま」に着けたのは僥倖だった。
ちなみにナビ子は迷ったあげくに、かなり手前の天麩羅屋の前で「左側、目的地です」と口走り、以後の案内を放棄した。

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まさに駅前ロータリーに面した「なかじま」。近くには新しい本店もあるらしい。

うーめんは旨かった。シンプルな「もり」をたのむとショウガとワサビの薬味がつく。
ショウガを入れるとソーメンっぽい味になり、ワサビを入れるとウドン風になる。
まあ、太さもちょうど中間くらいだしね。
店を出て、ぼたこな家とはここでサヨナラ。3日間ごくろうさまでした。来年もどこかへ行けたらいいね。

駅前をながめていると、いつだったかこの駅前に立ったことがあるように思えてきた。
既視感というやつだろうか。どこか懐かしささえ覚える。
同じことを考えていたのか、おかみがポツリとつぶやいた。
「一関の駅前に似てない?」
そうだ。一関だ。
さして大きくないロータリーにとまるタクシー。駅から右手の駐車場入り口。
かつて何度となく訪れた東北の小都市の駅前にほんとによく似ている。
既視感の正体がわかった。

東北道インターまでは、「なかじま」でもらった街のイラスト地図をたよりに向かう。
インターからはもうナビ子を使うこともないだろう。
正直この3日間、彼女とのやりとりで疲れ果てた。
料金所を越えたところで車を脇に寄せ、おかみと運転をかわる。
「どこか、磐越道のてきとうなところまで走っておくれ」
福島もきょうは晴れ模様。路面の雪は融けているはずだ。

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帰宅後に手に入れた「墨廼江 特別純米」。年明けから提供の予定だ。
四合瓶は気仙沼の蔵、角星の「船尾灯 特別純米無濾過原酒」。
「おかん分店」で飲み、気に入った銘柄だ。こちらは仙台で購入。
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